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そろそろ下校時刻が近くなった頃、遥を迎えに榊が来ていた。
「……」
榊は違和感を感じていた。
校門へ来る途中、体育館側を通ったときに感じた。
作業服を着た男たちがいたのだ。別に普通なんだが、男たちの目つきや気が違う。
男子生徒と教員らしい女性がいるからヤバイ連中ではないようだが、
「…何者だ?」
宮城さんは狙われていると総長が言っていた。
何か関係があるのか。
そして、時間になっても彼女は来ない。
「すいません、宮城遥さんはまだ校内ですか?」
通り行く生徒の一人に声をかけた。
「宮城さん? そういえば見てないよね?」
生徒は友人たちに言った。
「そうね、確か呼び出しの放送があってからよね」
「威くんも探してなかった?」
「威?」
「ええ、あ、あそこにいる男子がそうです」
そう言って生徒が指差したのは、先ほど体育館で見た生徒だった。
榊はお礼を言って威に向かって歩きだした。
「なんとか下校時刻までには間に合いましたね」
「ええ。威さんのおかげですわ」
「アイツとはどう連絡を取ります? こっちが気がかりで暴れられないでいるかもしれないですからねぇ」
「そうですわね…」
さっきは遥からの呼びかけだったから会話が出来たわけで、自分から呼びかけて果たして届くのかまったくわからない。
「…理事長」
突然、威の声が変わった。
「どうし…」
威の目線の先に、こちらへ歩いてくる男がいた。
スーツ姿だが、雰囲気からして堅気ではないことがわかった。
男は二人の前で止まった。
「威さんとはあなたですか?」
「…そうだけどあんたは?」
威は警戒しながら言った。
「私は榊と申します。宮城さんを迎えに来たんですが…、あなたも探していると聞いたので」
「宮城ならいないぜ」
「威さん」
綾子が遮る。
「いないとは、帰ったんですか? …それとも」
「遥さんは早退しましたのよ」
「そうですか、でもおかしいですね」
「なにがです?」
「屋敷に戻ってはいませんし、自宅に行くにしても連絡がありません」
「そっちに行きたくなかったんじゃないか? あんまり乗り気じゃなさそうだったぜ?」
「たしかに。ですがあの方はそういう方ではない」
榊は断言した。
「では、あなたは遥さんはどこにいるとお思いに?」
綾子のこの言葉に、榊はフッと笑った。
「それはあなた方がよくご存じのはずですが」
「…そうですわね」
ほほほ、と、綾子は笑った。
「ですが、場所はわからないんですのよ」
「わかりました。では失礼」
榊は車へ戻っていった。
「理事長いいんですか?」
威は苦い顔をしている。
これでイタリアと日本の戦争にならきゃいいが。
「大丈夫ですわ。今の方の態度を見てわかったでしょう? 総長さんは凄い方のようですわね」
ほほほ、とまた笑う。
一方遥は、目の前に置かれた銃と睨めっこをしていた。正確には、真っ二つになった銃と。
「……」
ご丁寧にまだ持っていたのね。
「これをやったのはお前だろう?」
「…それで目的は?」
答えずに質問した。
「…鍵だ」
「鍵?」
「そうだ、秘宝が眠る扉を開けるな」
秘宝ねぇ…。それのどこが秘宝なのやら。
遥は男の心を読んで、内心呆れた。
「それでその鍵のありかを探してるってわけ」
「そうだ。それをお前に探してもらう」
「無理です」
「なに?」
サラリと言った遥に男の目が鋭くなる。
「なぜだ? お前の力なら簡単だろう」
単純バカだな。
「あのねぇ、いくら力があるって言ったって、出来ることと出来ないことがあるわけ」
「…力があるんだろう? 出来ないわけがない」
遥は大仰に溜息を吐いた。
男の眉がピクリ動く。
「力にも種類があるの知ってます?」
「なんだ」
「念力・サイコメトリー・透視・テレパス・予知。代表的なのはこれくらいかな」
「お前は?」
「さぁ? ま、念力はあるかな」
「探す能力はないと?」
「どうかな」
遥の態度に段々と苛立ってきた男は、醜い笑みを浮かべた。
「まぁいい、どちらにせよお前を帰すわけにはいかない。アイツと一緒に冥土へ行ってもらおう。連れて行け」
その頃、連絡を受けた橘は麗子と共に動いていた。
本当は一人で動くつもりだったが、麗子が頑として聞かなかったのだ。
「私があの子を拾ったのがこの辺よ」
先日、麗子が遥を拾った場所に来た二人は車を降り、周辺を見渡す。
大通りに向かって歩き出す。
「組員に探させたらいいんじゃないの?」
「そう思ったが、それはやめろと言われた」
「あの子に?」
「ああ」
「……」
めずらしい、この人がいうこと聞くなんて。
榊の言葉でさえ滅多に聞かないのに。
…本気なのかしら。
大通りへ出た二人。
「ここからは聞いていった方が早いな」
そう言うと、橘は怪しげな店に入っていった。
麗子は店の前で待つ。
それが何回か続いたとき、橘が店の店員を引っ張ってきた。
「わかったの?」
「ああ。コイツに案内させる」
「勘弁してくださいよ橘さ〜ん…」
店員はスーツを着ているが、チンピラ系だとわかる。
もちろん橘のことは知っているので少しビビリ気味である。
「店のことはサツに黙ってやってるんだ、潰されたくなかったらさっさと案内しろ」
容赦ない橘に、ガシガシと頭を掻きながら店員は歩きだした。
「最近、この辺をウロチョロしてる外国人がいたんですよ。ただの観光客ならいいんですがどうみてもヤバイ系だったんで、それで下の奴らに見張らせてたんですよ」
「見張らせるだけでよかったな、じゃないとあの世行きだ」
「…マジっすか」
店員は息を飲む。
三人は奥まったところにあるビジネスホテルに着いた。
麗子と店員をここで待たせ中に入ろうとしたとき、一台の車が止まった。
一瞬緊張が走ったが、降りてきた人物を見て橘は鼻で笑った。
降りてきた方も橘を見るや嫌な顔をした。
「なぜキサマがここにいるっ」
口火を切ったのは相手だった。
麗子は降りてきた美形外国人二人をじっと見ていた。
「大声を出すな。気付かれる」
橘の冷たい視線が降ってくる。
「では、やはりここに?」
もう一人の人物が言った。
橘は頷くだけだった。
「ああ、あなた達ね、先日の電話の方は」
麗子が納得したように言った。
「私が篠宮よ」
ニッコリ笑って言った。
「私はレオ、こちらがアランです。先日は失礼しました」
いいえと麗子は笑った。
三人のやり取りを見ていた橘はホテル内へ歩きだした。
「おい、待て」
アランは橘の肩をつかんだ。
「……お前と遊んでいる暇はない。放せ」
「なんだと、」
「もう少し頭の良い奴かと思ったが…、レオとか言ったな、コイツを連れて帰れ、邪魔だ」
橘の言葉にカッとなりかけたアランをレオが止めた。
「アラン、落ち着いてください。今は遥さんを助けることが先です」
「――わかっている」
「…言っておくが、お前がここで喚いたことで、もう知られていると思え」
橘の言葉にハッとするアラン。
橘は一瞥するとホテルの中へ入っていった。
その場から動けずにいるアランに麗子が話しかける。